コロナ後の経済成長において日本は最低水準の伸び
チャンネルAJERで、投資ストラテジストの武者陵司氏が語った「ポストコロナの日本経済の見通し」について、ご紹介しします。
武者氏によると、OECDの経済見通しでは、アフターコロナにおける日本の経済成長率は先進国中最低レベルとのことです。
日本の感染者数は先進国中最低水準にもかかわらず、経済では日本の独り負けの状態です。
なぜこのような不可思議なことが起きるのか?
そして、アフターコロナにおいて、日本経済はどのように復活するのか?
今回の記事では、武者氏が動画で語ったポイントをご紹介します。
日本特有の同調圧力に負けてしまった
OECDの経済見通しによると、2020年における世界経済は-3.5だったが、2021年の見通しは4.2から5.8に上方修正された。
これはコロナの前のレベルに戻るというのが世界の趨勢である。そして、2022年は4.4という高い成長が持続する見通し。
日本経済は2020年に4.7%落ち込んだあと、2021年は2.6%となっており、主要国では一番低い見通しとなっている。
そして、2022年の経済成長率は2.0であるとOECDは推測している。これは欧米先進国の半分の経済成長率である。
一方、2022年の経済成長率は、アメリカが3.6、ユーロ圏が4.4となっている。
IMFが今年5月に出した世界経済見通しでも、チャイナはコロナ前に比べて3割の水準まで回復するだろう。アメリカも2割近い水準まで回復するだろう。それに比べ、日本は3~4%の水準までしか回復しないだろう、とIMFは推測している。
日本の独り負けのシナリオが描かれている。これは我が国のコロナの感染状況を考えると、極めて不可思議なことである。
先進国の中で、日本はコロナ被害が一番小さい国である。
人口10万人当たりのコロナ感染者数は、アメリカは1万人、日本は約600人。実にアメリカの16分の1である。死者数もアメリカの16分の1。
つまり、健康被害はアメリカの16分の1の日本は、経済被害はアメリカの2倍という極めて辻褄の合わない状況になっている。
日本経済の低迷は心理的要因によるもの
なぜ日本だけがこれだけ経済被害が大きいのか?
東京大学経済学部長の渡辺努氏は、「いろいろな分析をした結果、これは心理要因以外にない」と話している。
つまり、同じ健康被害に遭いながらも、積極的に経済活動をする人と経済活動を極端に自粛する人の心理の違いが、日米の違いを引き起こしている、と渡辺教授は言っている。
日本の場合は、同調圧力が非常に強い。そして、メディアは同質的な情報を硬直的に流し続ける。その結果、バランスを欠いた空気が醸成される。
このような状況下では異論を排除する空気が醸成され、合理的な判断ができにくくなる。
同調圧力に従って、非常に非合理的な判断をしてしまうというのが、日本の特徴である。これにより、人々の経済行動にブレーキがかかっている。
しかし、これはワクチン接種が広まるにつれて、このような心理的要因はなくなり、経済行動は活発になって行くだろう。
工作機械受注の数は増えている。半導体製造装置の受注は、アメリカのレベルを大きく超えて増えてきている。
つまり、世界的に景気が回復し、設備投資が活発化する中で、その設備投資の最先端の技術を担っている日本に対する引き合いが急増している。
従って、コロナ回復の自信とともに、企業収益も増加して行くだろう。
多くの人は「日本はダメな国」と言ってるが、武者リサーチは「日本は世界で一番底堅い国」「ダウンサイドの一番少ない国」だと主張してきた。
それはなぜか?
欧米やアジア諸国を見ても、ほとんど国では国論が分断されている。一方、日本において国論の分断はまったくない。
民主主義、市場経済に対する強い信頼、これらにおいて日本は世界の中でも特に強い。
台頭するチャイナに対してどうするべきか、チャイナの全体主義に一丸となって戦わなければならないという国民の意志の強さにおいて、日本は突出している。
国民の基本的認識、価値観においての一体感は、日本ほど強い国は他にない。つまり政治が安定しているということ。
国会ではくだらない議論をしてるいるという人々がいるが、端的に言うと、大局的な観点では自民党も立憲民主党もほとんど対立していない。
そのため、非常に些細なことで揚げ足を取るようなことをしている。
日本において、国民的対立軸はない。それほど日本は一致しているということの表れである。
まとめ
武者氏の話の中で特に興味深かったのが、日本における「同調圧力」です。
どこのメディアでもコロナ感染の恐怖を煽る報道ばかりです。
このメディアによる「洗脳」が同調圧力を生み、合理的な判断を妨げていると言えます。
しかし、日本独特の同調圧力がひとたびポジティブな方向に切り替われば、一気に世の中の雰囲気は変わって行くことでしょう。
武者氏はいつものように日本経済に関してはポジティブな見方をしています。
エコノミストのエミン・ユルマズ氏も武者氏と同様に、日本株に関しては一貫して強気の姿勢です。
日本人の個人資産2000兆円の大台に乗った可能性が高いとのこと。そして株の比率は16%しかない。それが今後倍に増えるだけで日本株はものすごいことになります。日経平均30万円は夢ではありません。2050年までに達成すると思っていましたがもっと前に達成するかもしれません。 https://t.co/LUlARevxxG
— Emin Yurumazu (エミンユルマズ) (@yurumazu) June 11, 2021
このご時世でなぜゴールドマンは日本で不動産投資を倍増させる?そしてあれだけ難攻不落と言われる日本の永住権制度の緩和は何を意味する?これらに加え東証の取引時間延長、休日取引開始の準備、処理能力の強化。すべては日本が香港に代わってアジアの金融と貿易ハブになることを示唆しています。
— Emin Yurumazu (エミンユルマズ) (@yurumazu) June 10, 2021
世界の覇権、経済、貿易、技術開発の中心軸は大西洋から太平洋にシフトしました。実に300年ぶりの大移動。そしてすべての真ん中にあるのは日本。私は日本に超絶な好景気が訪れると言っているのは思い込みではありません。歴史と経済を検証しながら出した極めて合理的な結論です。
— Emin Yurumazu (エミンユルマズ) (@yurumazu) June 10, 2021
先日行われたG7では、チャイナを名指し非難して、新冷戦の幕開けとなりました。また、NATOの首脳会談ではチャイナを敵国認定しました。
これで米中デカップリングが進むことになります。日本企業はアメリカにつくのか、あるいはチャイナにつくのか、早急に決める必要があります。
NATO、中国を安保リスクと認識 軍事的野心に対抗=共同声明
そこで、エミン氏の「世界の覇権、経済、貿易、技術開発の中心軸は大西洋から太平洋にシフトしました。実に300年ぶりの大移動」というツイートです。
エミン氏の予測通りになれば、この「300年ぶりの大移動」が日本株に与える影響は、相当大きななものになることでしょう。
楽しみな展開になってきました。