成功者はさらに富を増やし続ける
多くの人たちが豊かさを実感できていなといわれる現代社会において、ヘッジファンド業界のスーパースターたちは巨額の報酬を手にし続けています。
私がちょくちょく利用しているアメリカの金融情報サイトである”Market Watch“によりますと、2015年度、トップ25人のヘッジファンドマネジャーたちが手にした報酬額の合計は驚愕の$13 billion(1ドル100円計算で1.3兆円)だったそうです。(参考元:Top hedge-fund managers made $13 billion in 2015 even as Wall Street tanked)
一般的にヘッジファンドの手数料は運用額に対して2%、そして収益に対して20%と言われています。近年、この高すぎる手数料のため、主要顧客である年金基金の「ヘッジファンド離れ」が話題となっています。
2015年度、トップ25人が運用するヘッジファンドは驚異的なリターンを上げましたが、ヘッジファンド業界全体でみれば平均リターンは-1.1%でした。
昨年度、S&P500指数のパフォーマンスが-0.73%でしたので、「ヘッジファンド離れ」した元顧客にしてみれば、高い手数料を払うくらいなら割安なETFで運用した方が賢明であるということでしょう。
上位10人のヘッジファンドマネジャーを紹介
以下は2015年度に驚異的なパフォーマンスを叩き出したヘッジファンドマネジャーTop10です。1ドル100円としますと、年収1,000億円越えが5人もいるとは凄まじいです。
ランキング | 運用者名 | 会社名 | 2015年の報酬額 |
1 | Kenneth Griffin | Citadel | $1.7 billion |
1 | James Simons | Renaissance Technologies | $1.7 billion |
3 | Ray Daio | Bridgewater Associates | $1.4 billion |
3 | David Tepper | Appaloosa Management | $1.4 billion |
5 | Israel (Izzy) Englander | Millennium Management | $1.15 billion |
6 | David Show | D.E Show Group | $750 million |
7 | John Overdeck | Two Sigma Investments | $500 million |
7 | David Siegel | Two Sigma Investments | $500 million |
9 | O. Andreas Halvorsen | Viking Global Investors | $370 million |
10 | Christopher Hohn | The Children's Investment Fund Management (U.K.) | $300 million |
ケン・グリフィン氏は、2014年度も報酬ランキング1位でしたので、2年連続1位となりました。驚異的な報酬を手にし続けるケン・グリフィン氏とは一体どういう人物なのでしょうか?
Wikipedia(英語版)によりますと、同氏は47歳とまだ若く、ハーバード大学を卒業しています。2016年2月時点での総資産は、$7.3 billion(1ドル100円計算で7,300億円)だそうです。
大学在学中、ケン・グリフィン氏は彼の友人や家族から預かった$265,000を元手に、転換社債のアービトラージ戦略で運用を開始しました。
1989年に大学を卒業後、翌年の1990年に自身のファンド会社であるCitadelを設立。この時、運用総額は$4.6 millionになっていました。そして、1998年までには社員100名以上になり、運用総額は$1 billionの規模に増加していました。
2004年、ケン・グリフィン氏は35歳の時、フォーブス誌から「Self-Made(たたき上げ)」の40歳以下の成功者カテゴリーで8位にランクされました。
同氏はどこかの有名な投資銀行やファンド会社で経験を積んだわけではありませんので、まさに自身の明晰な頭脳と胆力のみでのし上がってきた「たたき上げの成功者」ですね。
余談になりますが、ヘッジファンドの平均運用期間は約5年です。これはほとんどのヘッジファンドが5年くらいで破綻することを意味します。さらに言えば、3分の1のヘッジファンドは3年以内に破綻します(参考元:Most hedge funds fail、The Looming Talent Crisis: Are Hedge Funds Due For a Wake-Up Call?、ヘッジファンドの破たん、例年上回る記録的な水準に)。
ヘッジファンドのトラックレコードが極端に短い理由は、運用失敗(戦略ミスというより、多くはずさんな資金管理によるもの)で資金の多くを失ったためにファンドを閉鎖するからです。そして、ほとぼりが冷めてから再度ヘッジファンドを立ち上げる、そして数年後にまた破綻・・・・。この繰り返しです。
ヘッジファンドと聞くと、それはそれは頭の良い人たちが最新の金融工学を駆使して運用しているとイメージしてしまいますが、ほとんどのヘッジファンドは数年後に破綻して市場から消え去ります。
62人が世界の富の半分を支配する
これはちょっと余談になるのですが、興味深い記事を前述のMarket Watchで見つけましたので、ご紹介したいと思います。
ますます加速する格差社会ですが、貧困問題に取り組むOxfamが調査した結果によりますと、僅か62人の大富豪が世界人口の半分と同じ富を手にしているとのことです。
同調査によりますと、この62人の大富豪の富は2010年以降、44%増加しており1兆7600億ドルとなっています。一方、比較対象となった世界人口の半数の人たち(貧困層)の富は同時期に41%減少しています。
Oxfamのレポートにも書かれていますが、62人という人数は大型バス1台の定員にあたります。大型バスの定員くらいの数の大富豪たちが、世界の富の半分を手にしているとは驚くべき事実ですね。
ちなみに、この62人が保有する資産額は、2015年のブラジルのGDPとほぼ同じです。これはカナダや韓国のGDPよりも多い額です。
以下のリンク先では2つのチャートが紹介されていますが、2010年以降、世界的な所得格差は急加速しているのがよく分かります。Oxfamのチャートを見る限り、この所得格差はさらに拡大して行きそうです。
(参考元:Just 62 people own as much wealth as half the world’s population: Oxfam)