「60%株 + 40%債券」という伝統的アセットアロケーションはもはや時代遅れなのか?

「60%株 + 40%債券」は米国では一般的なアセットアロケーション

アメリカにおいては、一般的なアセットアロケーションは「60%株 + 40%債券」とされてきました。そして、ポートフォリオの見直しの際には「リバランス」をして、この配分を調整します。

私もニューヨークで会社員をしていた時は資産運用をしていましたが、最初の頃はアセットアロケーションという考えが無かったため、100%株式で運用していました。

私が働いていた会社では401Kを導入していましたので、私も毎月数百ドルほど積立投資を行っていました。

大学卒業後に入社した会社は金融とは全く関係が無い業界で、また、私も投資の知識がほとんど無かったため、とりあえず私は「オレはハイリスク・ハイリターンで行くんや!」などと言って、かなり無謀なアセットアロケーションをしていました。

また、401Kとは別にミューチュアルファンドでも運用していたのですが、こちらはフィデリティに赴き、過去の平均リターンが一番高いものをテキトーに選んで購入しました。

今思えば、素人丸出しの投資をしていたわけです。その後、ITバブルが崩壊して、結局、私の投資信託(IT株ファンド)は大暴落してしまい、投資額が3分の2を割ったところで解約(損切り)しました。

この「損切り」のことを、大学院卒業後に入社した証券会社のトレーダーに話したところ、「お前、トレーダーに向いてるんじゃないか」と冗談半分で言われたのを覚えています。

私が入社した証券会社でも401Kを導入しており、この頃になるとさすがに私も投資の知識を持ち合わせていましたので、以前のような無謀なアセットアロケーションはしませんでした。

今となっては当時のアセットアロケーションは詳しく覚えていませんが、株式の配分が50%以上で、それ以外は米国債や社債で運用していたと思います。

「低金利時代」と「高い平均寿命」により変化するアセットアロケーション

本日、USA Todayのネット版を読んでいたところ、興味深い記事がありましたので、ご紹介したいと思います。

記事の見出しを和訳すると「『60%株 + 40%債券』のアセットアロケーションは2016年には通用しない」となるでしょうか。

この記事によりますと、一昔前までは「60%株 + 40%債券」というアセットアロケーションが一般的でしたが、投資アドバイザーたちはこの配分をもはや推奨していないとのことです。

とある投資アドバイザーはその理由を2つ挙げています。

  1. 歴史的な低金利時代に入っているため
  2. 平均寿命が延びているため

これは一体どういうことでしょうか?

歴史的な低金利時代に入っている

先日発表されたアメリカの雇用統計の数字が良かったため、FRBが12月に利上げに踏み切るとの見方が強まっています。

しかし、来月に利上げが行われたとしても、90年代の金利には遠く及びません。

90年代、米国債10年物の金利は約7%でした。一方、現在の米国債10年物の金利は2.35%ほどです。(参考元:The 60/40 stock-and-bond portfolio mix is dead in 2016

$10,000を年利2.35%で運用すると、1年後には$235増えることになります。日本国債10年物の金利と比べると桁が違いますが、アグレッシヴなアメリカ人はこの程度の金利では満足しないのでしょう。

さらに言えば、1930年以降、米国株は20年のスパンで見る限り、一度もマイナスのリターンを計上していません。(参考元:The 60/40 stock-and-bond portfolio mix is dead in 20168 lessons from 80 years of market history

アメリカ人はこの株式市場への安心感を背景にして、株式の配分を多くすることが容易に行えるのだと私は思います。

最大のリスクは自己資金で賄える以上に長生きしてしまうこと

USA Todayの記事によりますと、アメリカ人の平均寿命は79歳です。仮に60歳で仕事を辞めた場合、その後の約20年間の生活を支えるための貯蓄が必要になってきます。

アメリカにはソーシャルセキュリティという年金制度がありますが、高騰する医療費や薬価のため、安心した老後生活を送るためには相当な蓄えがないと年金だけでは生活できません。

以前の記事でも書きましたが、「老後の生活はかなり厳しいものになる」と考えているアメリカ人が多いため、少しでも余裕のある老後生活を送るためにリスクを取って、より高いリターンを求めざるを得ないのではないかと考えられます。

また、この記事に登場する投資アドバイザーによりますと、「最大のリスクは短期的な変動が激しい株式への配分比率などではなく、自己資金で賄える以上に長生きしてしまうこと」とのことです。

トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」の中で、“Dying slowly in America, after all, can be a very expensive proposition.”(アメリカでゆっくりと死んで行くことは非常に高くつくことになる)という台詞がありますが、これは誇張でもなんでもなく事実です。

これはアメリカ人に限らず、私達日本人にも当てはまることですが、医療費や薬価が日本とは比べ物にならないくらい高いアメリカでは、自己資金で賄える以上に長生きすることは確かに「リスク」です。

自分の身は自分で守る

前述の投資アドバイザーが言うように、「最大のリスクは自己資金で賄える以上に長生きしてしまうこと」は非常に説得力のある言葉だと思います。

医療費が払えなくて毎年数多くの破産者(約90万人)が出ているアメリカと違い、日本の社会保障制度はまだしっかりしています(まあ、報道によれば「日本の健康保険制度は破綻状態にある」らしいですから、将来的にはどうなるか分かりませんが・・・)。

(参考元:Medical Bills Are the Biggest Cause of US Bankruptcies: Study

※約90万人の破産者の内、約7割は何らかの医療保険に加入していた。

とは言うものの、お金の心配をせずに老後生活を送るためには、若い時から何かしらの手を打っておく必要があると思います。

誰にも頼らずに資産形成を行うためには、日頃から投資リテラシーを鍛えておくことが重要なのではないでしょうか。

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