今の株高はバブルではない
今の株高は世界的なカネ余りによるバブルである、と見ている人は多いと思います。
そして、株価の急落を警戒すべきとする記事も少なくありません。
しかしながら、投資ストラテジストの武者陵司氏は「今の株高はバブルではない」と断言しています。
今回の記事では、武者氏が「東京マーケットワイド」で語ったポイントをご紹介します。
今やポストコロナの時代は完全に視野に入っている
イスラエルでは、人口の5割がワクチン接種を終えている。アメリカにおいても、毎日約130万人のペースでワクチンの接種が進められている。
バイデン大統領は、就任後100日間で1億人がワクチン接種することになると言っていたが、現在のワクチン接種のペースはこれを上回っている。
恐らく、年央までにはワクチン接種により急激にコロナ患者が減り、死者が減ることはほぼ確実だろう。
コロナの脅威が薄まれば、とてつもない景気の上昇が起こるかもしれない。
現在、半導体不足により、自動車の生産が大幅に減産になっていると報道されている。足りないのは、自動車だけではなく、コンテナだとか、様々なものが足りなくなって、商品市況も上がることになる。
これはまだ、コロナで実際の製造業の稼働がピークに達する前に起きている。
この状況を踏まえ、コロナが沈静化した後に何が起きるかというと、非常に大きなマーケットのショートスクイーズ(急騰)どころか、プロダクト(商品)のショートスクイーズも起こりうる。
繰り返しになるが、半導体が今この状態にある。
産業革命が起きている
市場の大きなニーズのパワーに加えて、中央銀行、各国政府が空前の経済サポートを行っている。
「この経済サポートによる株価上昇なので、これはバブルだ」という人がいるが、そう言いたければ言えばよい。しかし、実際に起きていることは、極めて確かな景気の見通しと、極めて強固な政策のサポートがある。
この2つが揃っていて、株価が下がることは起こりえない。
仮に、景気がよくならないとか、インフレが昂進して中央銀行や政府の景気対策をやりたくてもできないというときに、はじめて警戒すべきであって、いまは警戒すべき局面ではない。
マーケットが投機的になり、マネーゲームにより一見バブルに見えるが、これから企業収益がもっと良くなる可能性は十分にある。
それに加えて、いま産業革命が起きている。これまでとは違うビジネスのやり方が展開されている。
恐らくコロナが終息した後、これまでと同じように会社に行く人はいないだろう。様々な形での新しい働き方が定着し、それに基づくライフスタイルができてくる。
これは壮大な新規需要を引き起こす。
このような一連の動きを考えれば、今の株高は当然のことだろう。
アメリカの株高はバブルではない
本来、2020年は景気回復の年だったが、コロナパンデミックにより、回復どころか底割れが起きた。
底割れが起きたということは、バネが大きく縮んだので、その後のリバウンドが大きいというのが、今の場面である。
半導体生産において、チャイナはアメリカに追いつこうとして、かなりの投資をしていた。半導体の過剰供給になりそうだったのが2019年のこと。
しかし、アメリカとの経済摩擦により、半導体の投資が完全に凍結された。チャイナからの供給増がなくなってしまった。これが今の半導体不足に拍車をかけている。
いまは非常に大きな景気拡大局面に入っている。
政府が巨額の財政出動をして、中央銀行がそれを丸ごと国債発行で対応をするというのが、財政金融一体化。これをやったら将来大変なツケが待っているという議論は、今は棚上げにすべき。
FRBもイエレン財務長官も、金利が低いのなら財政金融一体化で上手く行くと断言している。
アメリカ株はバブルだと言われているが、過去10年間、アメリカの年金はずっと株を売り越している。家計もずっと株を売り越している。2020年後半になって、ようやく株を買い始めた。
では、誰が株を買っているのかというと、それはひとえに企業の自社株買いである。それに加えて、個人が株を買い始めた。
個人による投機的な株買いはごく最近の話で、個人はここ10年間は株を減らし続けてきた。年金などもそうであった。従って、株式需給そのものは、投機的なバイアスが掛かっているわけではない。
アメリカの家計や機関投資家が著しくウェイトを置いているのは、米国債である。米国債へのオーバーウェイトが、寧ろリスクになっている。
本来ならば、リバランスをして債券を減らして株を買う場面である。この状況を踏まえると、今の株高は決してバブルではない。
金利の低い債券を減らして、より高い利回りの配当がある株を買うのは、きわめて合理的な行動である。
日本においては、この10年間、家計は35兆円分の株を売っている。家計が売った株を日銀が買っている。お陰で家計は配当をもらえない。株の値上がり益をもらえない。それらはすべて日銀がもらっている。
いま日本は非常に強い立場にいる
世界最大の半導体製造拠点は、韓国と台湾である。世界の半導体の5割は、この2か国で供給している。
韓国、台湾の貿易収支の特徴は、6割~8割はチャイナ向けの輸出である。あとは対米輸出で儲けている。
韓国、台湾とも、その半導体をつくる材料は、一手に日本から買っている。
韓国、台湾の対日貿易赤字額は、両国ともだいたい200億ドルくらいで、最大の貿易赤字相手国は日本である。
つまり、世界最強の半導体製造国である韓国と台湾は、日本からの材料供給により、半導体の製造が成り立っている。
このような東アジアの分業構造において、日本の重要性というのは非常に高い。これはこれまで見えなかったことだが、これからは日本の重要性が顕在化してくるだろう。
たとえば、半導体不足になる。材料が足らなくなる。従って、半導体も材料屋も値段を上げる。値段を上げる時に、この材料がないと製造ラインが回らないとなると、値上げをせざるを得ない。
そのような有利なポジションにあるのが、日本のハイテクサプライである。ハイテクサプライにおける日本の優位性は、この10年間維持されてきた。
まとめ
武者氏の話の中で、私が特に興味を持ったのがアフターコロナの生活様式です。
社会の変化というのは不可逆的なものです。コロナが落ち着いたとしても、元の生活に戻ることは決してないでしょう。
となると、アフターコロナの生活様式に合わせた、新しいビジネスが生まれます。
新エネルギー・産業技術総合開発機構がまとめたレポートによりますと、国内外識者(120名)による社会変化予測として、以下の項目を挙げています。
- デジタルシフトの加速
- 反グローバル化と国内回帰
- 米中の対立激化
- あらゆるコミュニケーションがオンライン化
- 居住と就業先が地理的に分散
- 飲食業や観光業は産業規模としてかなり縮小
- オンラインによる新ビジネスが次々登場
- リモート化、分散化など新しいライフスタイルに伴う需要
- 3密対策を盛り込むなどこれまでにない市場セグメントが登場
- 人間の行動変化が技術革新をリード(人間中心)。倫理観がより重要に
- 利益追求だけではなく、自然と共存する考え方に。長期目線の経営に
- AI活用加速により余剰労働力が増大
- 共助、利他性、互酬性などが組み込まれた社会に
- ITにより、人間の感情までリアルタイムで監視することも可能に
これから株式投資を始めるにあたり、この予測に当てはまる企業の株を手掛けてみるのも一案ですね。
最後に、武者陵司氏のレポートは、以下のリンク先のサイトで読むことができます。有益な情報が満載です。