アメリカンドリームの定義とは?
グローバルにビジネスを展開するアメリカの資産運用会社であるLegg Mason(レッグメイソン)が、同社の裕福な顧客に行ったアンケート結果が非常に興味深かったのでご紹介したいと思います。
なお、この「裕福」というのは曖昧な定義ですが、同社では20万ドル以上のお金を運用している顧客を「裕福」と定義しているようです。この顧客達は「20万ドル以上の資金を運用」している人達ですので、それほどお金に困っている人たちではないでしょう。
この内の500人の米国人投資家に対して「あなたにとってアメリカンドリームの定義は何か?」と尋ねたところ、以下の回答が最も多かったとのことです。
- お金に困らない生活を送ること
- 自分の好きなことができる自由な生活を送ること
- 65歳でリタイアして、その後は快適な生活を送ること
- マイホームを持つこと
- 努力は必ず報われると信じること
上記の回答の内、恐らく1つ目と2つ目は他の国で同様のアンケートを行っても似たような結果になると思います。
このアンケートの回答者に限って言えば、最初の定義を満たすことで「アメリカンドリームを実感」できるのであれば、その人の心のあり方次第でアメリカンドリームを達成できてしまうと思います。
また、分野にもよりますが、インターネットで簡単に起業できる現代社会において、2つ目の定義を満たすのも不可能なことではないでしょう。
好きな仕事をして月2000ドルくらい稼ぎ、友人数人とルームシェアして暮らして幸せを感じていれば、その人はそれで「アメリカンドリームを達成」してるでしょう。
逆に、50万ドル稼いでいても浪費癖が抜けず、一向に幸せを感じない人は「アメリカンドリームを達成していない」のでしょう。
私の経験上、アメリカの都市部に住むのでしたら、単身者の場合ですと年収8万ドルほどあれば、それほど不自由なく暮らせると思います。ただし、会社から支給されている福利厚生パッケージが充実しているものであることが前提です。
(参考元:SURVEY: The American Dream is ‘no longer in reach’、Why I Believe the American Dream Just Died)
アメリカンドリームはもはや到達できない目標
上記アンケートの回答者の55%は、「アメリカンドリームは手が届かない存在」と答えています。また、55歳から64歳のいわゆるベビーブーマー世代の62%も「アメリカンドリームは達成できないだろう」と答えています。
さらに興味深いのが年収25万ドル以上の方達の回答です。彼等の内の64%も「アメリカンドリームはもはや手が届かない存在」と答えています。
年収25万ドル(約2700万円)もあればそこそこの生活は送れると思いますが、超格差社会のアメリカにおいて25万ドル程度の年収では「お金持ち」という感覚は得られないのでしょう。
医療費が日本と比べて桁違いに高いアメリカでは、外科手術をしたり慢性疾患を抱えてしまったりすると、病気だけではなくお金の心配もしなくてはなりません。
つまり、カバー率の悪い医療保険しか持っていなかったり、あるいは保険会社が支払いを拒否した場合、自己負担額がとんでもない金額になってしまうわけです。
そして、住む場所によっては、毎年高騰する家賃がアメリカンドリームをさらに遠くに追いやってしまいます。
NY市民の半数以上が支払い能力を超えた家賃を払っている
ニューヨークに住む日本人のために、最新ニュースや役立つ情報を提供してくれているDAILYSUNのウェブ版で、非常に興味深い記事を見つけましたのでご紹介したいと思います。
この記事によりますと、ニューヨーク州の住民の5割以上が、本人の支払い能力を超えた額の家賃を払っているそうです。そしてこの傾向は、全米一貧富の差が大きいニューヨーク市でさらに顕著だそうです。
住宅費用の負担が本来の支払い能力を超えている州民の割合が、5割を超えていることが判明した。同報告書によれば、家賃の金額が支払い能力を超えている州民の割合は、12年前から10%増加しているという。(引用元:高すぎるNYの家賃 市民の半数以上が負担過剰)
これは2年前の記事ですが、今ではこの高い割合がさらに高くなっているようで、ニューヨーク市の住民は収入のおよそ65%を家賃の支払いに充てているとのことです。(参考元:NYの家賃は収入の65%! クイーンズで最も上昇)
う~ん、収入の65%を家賃に充てているとは・・・。これではさすがに生活が苦しいですよね。
(エンパイアステートビルから望むマンハッタンの街並み)
私は4年ほど前にニューヨークシティにしばらく住んでしましたが、その時に一番驚いたのが家賃の高さでした。ちなみに昨年の調査では、マンハッタンのアパートの平均家賃は月3851ドルとのことです。(参考元:NYC worst city in nation for retirees, according to Bankrate.com report)
私が最初にニューヨークに渡った90年代初頭は、貧乏学生であった私でもルームシェアという形でマンハッタンに住むことができました。
また当時、ハーレムなどはまだ犯罪多発地域とみなされていましたので、アパートの家賃はかなり安かったです。
しかし、90年代末辺りから始まった再開発のお陰で、ハーレムは今やホットなエリアに生まれ変わり、この地域のアパートの家賃も高騰しました。そして、ここはブラックカルチャー好きの日本人(女性も少なくない)が好んで住む人気エリアになっています(とは言っても、全く危険でないわけではありませんが・・・)。
余談となりますが、危険度でいえばブルックリンのイースト・ニューヨークが最も危険な地域(行政区でいえばブロンクス区)とされています。ここは「マジでヤバイ街」なので、単なる好奇心だけで訪れてはいけません。(参考元:NY市で殺人事件増加 今年に入り16%増)
ニューヨークシティには、全米だけではなく世界中から大きな野望を持つ人たちがぞくぞくと集まってきますので、家賃の高騰は今後も続くと思います。しかし、収入の65%を家賃に充てなければならない状況を考えますと、ニューヨークシティでアメリカンドリームを達成するのは相当な覚悟と胆力が必要ですね。